Snake on the Beach
「チバさんは、むき出しな人だった」
写真家アミタ・マリが、チバユウスケのソロプロジェクト「SNAKE ON THE BEACH」の写真と、その時間を語ります。
アミタ・マリ
1973年生まれ、山口県出身。専修大学文学部卒。
モデルを経て写真家・野村浩司氏に師事、2001年に独立。
2003年・宝島社の新聞広告で朝日広告賞グランプリを受賞。
数多くのミュージシャンのCDジャケットやポートレートを手掛けるほか、広告、カルチャー、ファッションを中心に活躍中。
2013年、初の個展『silent flowers 』をGALLERY SPEAK FOR にて開催。
写真展『YUSUKE CHIBA SNAKE ON THE BEACH』に寄せて、アミタ・マリ氏にお話を伺いました。
ロックスターのチバユウスケのままの表紙
ロックスターのチバユウスケのままの表紙
写真集の軸になる写真は、やっぱり表紙と裏表紙になったこの対照的な表情かなと思う。最終的にどっちが表紙になっても良いっていうくらい迷った。
実はSINGSのジャケットと写真集の表紙、裏表紙の3つの表情は連続して撮った一連の写真。目をつぶっているのが最初で、その後笑って、最後にこの無の表情になっていった。ほんの一瞬の中で表情が変わっていくんだけど、この対比がすごく良くて。表紙を考えた時から、裏には笑顔の写真にしたいって思っていた。
結果、表紙にしたのはインパクトがあるこの写真。ロックスターのチバユウスケのままを表現したかった。ちょっと強すぎるかなとも思ったけど、チバさんはそのくらいの人だから。表紙が強くて、でも裏では笑っているっていう構成にした。
全部見えているものが美しいわけじゃない
全部見えているものが美しいわけじゃない
SINGSのジャケットになった写真は逆光でシャドウがかなり強い。チバさんから目をつぶったアップの写真にしたいという要望があり、ジャケットにする時には「暗めでよろしく」というお願いもあった。
最初から逆光で撮った写真だったから、仕上げは無理に明るくしないでむしろもう少し暗くてもいいかもって。私もそういう写真が好きだし、全部見えているものが美しいわけじゃないっていうか。ちょっと暗い、影の美しい写真。
SINGSのジャケット・写真集の表紙も裏表紙も、印刷はかなりギリギリのラインを攻めてる感じ。



古びていく感じも楽しんでもらえたら
写真展は何も決まっていない中で、一番大きい額に2枚を並べて飾ること、その額を自分で作ったちょっとゴツめのものにすることだけは最初から決めていた。写真って複製物だけど、それをどう飾るかは写真展の面白さでもあり難しさでもあって、飾り方に私の熱量が伝わると思っている。壁にピンでプリントを打つだけでも成り立つけど、私は額そのものも好きだから。
今回は販売することも決めていたからみんなが扱いやすいアクリルに入った額も作りつつ、そこにちょっとはみ出すような、もっとざっくりしたテクスチャーの自作の額も混ぜて展示しようっていうコンセプトだった。塗っては削ってエイジングしたり完成の手前で止めたりもする。途中段階の物の美しさが好きで、額によってはフレームの四隅が欠けていたりしてちょっとパンキッシュというか。複製物ではあるけど、私には油絵みたいな一点ものの憧れがすごくあって、額も含めて一つのものとして存在感を高めたかった。
写真を釘で打って、生の状態で見せるのも好き。初めて見た人は「写真を釘で打っているんですか」ってなると思うけど、自分の写真だから、私が良ければ何やったっていいかなって。チバさんもきっと「いいじゃん」って言ってくれそうな気がしたから、そこは好きにやろうと思った。
額は今までも作ってきたけど販売するのは今回が初めてで、ガラスとかアクリルで覆ってないから劣化する怖さもある。でもポスターだってずっと貼っていたら色褪せたり破れてきたりするけど、それもまたかっこいいんだよね。古着と一緒でヴィンテージとか革ジャンが何十年も着て自分の体に合ってきて、バイクで転んで擦れたりしながら年季が入っていくみたいに、自分の写真も家にずっと飾られて埃がついたり色が少し褪せたりしても長く愛してもらって、古びていく感じも楽しんでもらえたらなと思う。
そういうのを愛しいと思う同じ感覚の人に手に取ってもらえたらいいけど、その反面、すごくきれいな状態で保管したいっていう気持ちも分かるから、アクリルに入った額装のタイプも選べるようにした。
匂いだけで伝わるような
匂いだけで伝わるような
TシャツはRUDE GALLERYの片柳さんが「好きにやりなよ」って言ってくれたのもありつつ、黒と白の2種類にした。
黒は最初からこれしかないなっていう、後ろ姿のブレて歩いている写真。チバさんの写真でTシャツを作るならチバさんの存在を感じる・匂いだけで伝わるような物にしたかった。この歩いている後ろ姿だけでチバユウスケのかっこよさとか匂いは十分入っていると思うし、ロードムービーの断片みたいな写真だったからこれは迷いがなかった。
白は、ボディの色をオフホワイトにしたいっていうのも最初からあった。私が単純に好きだし、少し優しくなるというかハードすぎなくなるから。少し厚めの生地にしたのは、タフにたくさん着たかったから。
写真は夕日の中で笑っているカラーの写真。これはすごい挑戦だった。インクジェットじゃなくてシルクスクリーンでやりたいっていうのは私のフォトTの好みでもあるんだけど、カラーでシルクスクリーンはやったことがなくて不安もあった。古着やヴィンテージのロックTのような粒子がざらっとした感じを作りたくて、カラー写真をモノクロに分解して4色で表現している。シャドウやロゴを黒ではなくグレーにしたのもオフホワイトのボディと馴染む大事な要素になったと思う。
サンプルをやり直す時間がなくて一か八か想像に任せたら見事にはまり、上がった時には拍手が起きたんだよね。うまくいってよかった。
まっすぐでピュアで、むき出しな人だった
まっすぐでピュアで、むき出しな人だった
チバさんを撮る時に意識しているのは、なるべく自分に正直でいること。感じたままに動けるように自分らしくいることを大切にしている。なぜかというと、チバさんがもの凄くまっすぐでピュアで、むき出しな人だから。自分が何か覆っていたりするとすごく失礼なんじゃないかと思う。
私をさらけ出さないとチバさんを撮れない。チバさんはそのくらい大きな存在だから、ちゃんと自分がブレない状態でいないと飲まれるし、撮らされている状態だとダメなんですよね。写真を撮る行為って会話の代わりというか、よく写真は鏡だって言うけど響き合うというか。特にSNAKE ON THE BEACHの時はチバさん一人だったからかなり素の状態のままだった。
今回、ファンの人から「チバさんってどんな人だったんですか」って聞かれることがすごく多くて、その度になんて表現したらいいんだろうって考えた。でもやっぱり「むき出しな人だった」っていうのが自分の中で一番しっくりくる表現。チバさんがむき出しな人だったから、私もさらけ出さないと撮れなかった。人を撮るってそういうことかなっていうのを本当に教えてくれたというか。それがこの写真集を作ることに向き合って、一つ答えというか気づいた大きなことかなと思う。
アミタ・マリ氏の言葉を通して、写真作品に込められた思いや「SNAKE ON THE BEACH」の世界を、より深く感じていただければと思います。

SNAKE ON THE BEACH
ミュージシャンのチバユウスケのソロプロジェクト「SNAKE ON THE BEACH」のために撮り下ろされた写真をまとめた写真集。アルバムのブックレットに使用されたカットに加え、制作の過程で生まれたアザーカットも収録。印象的な風景や、チバユウスケの存在感を捉えたポートレートが再構成されています。
4枚のアルバムに呼応するように章立てされ、「DEAR ROCKERS」「潮騒」「real light real darkness」「SINGS」それぞれの世界観の断片が、静かに連なっていきます。
荒涼とした海辺の風景、撮影の合間に現れる光景、そしてチバユウスケのポートレート。音楽と写真が交差することで浮かび上がる、「SNAKE ON THE BEACH」のもうひとつの風景。チバユウスケのソロ活動の軌跡を、静かで力強いイメージの連なりとして体感できる一冊です。


